Daily Report

2006年6月7日(水)<前編>

新たなインターネット「Net2.0」が目の前に
ネットワークを次のフェイズへと誘う
Interop Tokyo 2006&IMC Tokyo 2006が開幕

最先端のインターネット環境を実際に体感できるInterop Tokyo 2006。そしてそのInteropを飛び出してデジタルコンテンツ時代の「放送」にフォーカスをあてたInterop Media Convergence。日本のネットワーク技術の集大成ともいえる2つのイベントが6月7日、ついに幕を開けた。
6月5日にスタートしたコンファレンスの熱気を受け継いで、会場前から詰め掛けた多くの来場者で展示会場のボルテージは最高潮を迎えている。展示会の開催を告げるオープニングセレモニーと注目の基調講演、そしてInteropの両輪であるShowNet&ShowNetTVのレポートをお届けする。

開場に先立つオープンセレモニー
「Interopを通じて次のインターネットのファンダメンタルを作り出そう」

「Interopを通じて新しいフェイズの原理原則を追求することで、起こりうるネット上の事件を未然に防ぐ足がかりになる」とInteropの意義について語る高橋徹氏

 開場前、登録受付前には多くの参加者が詰め掛けており、新たなライフラインとして認知されつつあるインターネットに対する注目度の高さが感じられる。そんな参加者の注目のなか、会場入り口に設置されたNOCブースの前で恒例のオープニングセレモニーが催された。Interop Tokyo 2006の実行委員長を務める高橋徹氏は「今年のテーマ"Back To the Fundamentals"は、ネットの初心に戻り、それを確認し、明日に向けて新しいフェイズの原理原則を追求していくというもの。インターネットの第2フェイズの時代に相応しい基本原則を作って行こうではありませんか。Interopは最大の教育機会。この機会を活かして次世代のファンダメンタルを作って頂きたい」と本年のInteropのテーマと展示会・コンファレンスへの期待を語った。続いて、Interop日本・アジア プログラム委員会 副議長の江崎浩氏が「今年のInteropでは、ShowNet TVをはじめとしてさまざまなメディアを40Gのバックボーンに乗せて流す、世界でも類をみないデモンストレーションを行っています。ShowNet、テクニカルセッション、各種デモンストレーションを通して、次のインターネットを一緒に考えて行きたいと考えています」と本年のInteropの見所と展示者と来場者の相互接続について述べ、CMPジャパン メディアライブ事業部マネージングディレクターの管埜寛之氏が挨拶を行った。
 来賓として総務省 総合通信基盤局 データ通信課 インターネット基盤企画室 室長ヨシダヒロシ氏、経済産業省 商務情報政策局 情報経済課課長の加藤洋一氏がInteropへの期待と祝辞を述べ、最後にイベント開催地である千葉県の県知事 堂本暁子氏からのメッセージを商工労働部長 飯田耕一氏が読み上げた。Interopは、世界に先駆けてブロードバンド環境を推進する日本が直面するさまざまな問題を解決するためにも大きな役割を担っている。それぞれの祝辞の中には、Interopへの大きな期待が込められていた。
 参加者の熱気に包まれるなか、ファンファーレに合わせてテープカットが行われ、展示会がスタートを切った。参加者は一斉に会場内へと進み、それぞれが目当てのパビリオンやブースへと向かっていった。

江崎浩氏は「今日は例年よりも長い列ができている」と、インターネットおよびInteropの注目度の高さを強調した。
テープカットに合わせて展示会がスタート。左から、CMPジャパン メディアライブ事業部マネージングディレクターの管埜寛之氏、Interop日本・アジア プログラム委員会 副議長の江崎浩氏、千葉県商工労働部の飯田耕一氏、総務省のヨシダヒロシ氏、経済産業省の加藤洋一氏、実行委員長の高橋徹氏、CMP Media ジェネラルマネージャ&バイスプレジデント/インタロップ レオナルド・ヘイマン氏。
入場前、例年にも増して長い列となった参加者。事前登録者がすべて会場に入るまでに30分以上の時間がかかるほどの盛況ぶり。
 

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Interopを裏側から伝える・分かる・楽しめる
ShowNet Technology Workshop

会場すみに設置されたDVカメラまでもが、変換BOXを通してShowNetに接続されてInteropのネットワークの一部として動作する。
 6月5日のデイリーリポートでもお伝えしたとおり、今年のエデュケーショナル・コンファレンスの中でひときわ注目度の高いセッションが「ShowNet Technology Workshop」だ。展示会場が開く前の朝10:00からスタートし、夜18:00までの長丁場。これに参加すると本日はほとんど展示会場内を見ることができないにもかかわらず、非常に多くの参加者が詰め掛けた。
 ShowNetを構築するNOCメンバーやSTMメンバーによる解説はこれまでにもShowNetウォーキング・ツアーという形で行われている。しかしこのツアーは参加が抽選であったり、限られたルートの解説であることから、より深くShowNetを知りたいという人には物足りない面もあったようだ。逆にNOCメンバーやSTMメンバーも「話し足りない」という意識を常に持っており、「Net2.0」という新しいメッセージと共にShowNetをきちんと語る機会を設けようと今回この企画が実現したというわけだ。
熱心な参加者が集まって朝から晩までShowNetの全てを語りつくす、エデュケーショナル・コンファレンスの新たなチャレンジとなった。
 1日を複数のパートに分け、まずはShowNetのこれまでの歴史からセッションは始まった。説明のほとんどの部分でテクニカルタームが用いられているが、そこはShowNet Technology Workshopを選んだ参加者。質問コーナーでは難解な用語の補足はまったく求めず、さらに突っ込んだ内容を講演者に求めるほどだ。このセッションの模様は専属のスタッフが撮影を行っている。その場では撮影スタッフだが後のパートでは講演者になるとのことで、いきなり話をスタッフに向けたりといった講演者とスタッフの掛け合いを交えながら進行していった。

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Interopを余すところなくネット配信する
ShowNet TV in Interop Media Convergence

HALL7にあるShowNetTVのオープンスタジオ。InteropおよびInterop Media Convergence会場内の全ての映像をここで管理/配信している。
 これまでInteropの中のひとつのテーマとして扱われていたネットを使った映像配信が、今年から「Interop Media Convergence」として独立を果たした。ここでの中核となるのはInteropの期間限定の放送局「ShowNet TV」だ。HALL7に設置されたスタジオでは、撮影した映像をIPネットワーク上で編集や管理、配信を行っている。今回は編集を行う部分までオープン化されているため、生放送中の講演者から撮影・編集スタッフまですべての流れを一目で見ることができる。
 なおShowNet TVではALL About ShowNetと題して、NOCメンバーによるShowNetの解説番組を放送中。ShowNet Technology Workshopとはまた別の内容なので、残念ながらShowNet Technology WorkshopやShowNetウォーキングツアーに参加できなかった人はもちろん、参加した人もぜひ試聴してほしい。

>>試聴方法についてはこちら

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基調講演レポート1
「技術から見た通信と放送の未来」

 Interopの中でも一番多くの人が集まるのが3日間にわたって行われる基調講演だ。事前登録者からの優先入場となり当日の希望者は後から入場するのだが、今年は例年以上の来場者があり優先入場者だけで立ち見が出るほどの盛況ぶりとなった。この人気の源は、実際にネットワーク構築に携わっていたり、知識や技術を持って統括する立場の人物が現実のネットワーク環境に即した講演を行う点だ。特に今年は各講演者が社会の基盤として動作しているネットワークのファンダメンタルをもう一度見直そうという、Interopのテーマ「Back To the Fundamentals」をそれぞれの立場から語っている。
「通信・放送のデジタル化を受け、IPネットワークとどのように相互接続していくかが課題」と語る村井純氏。
注目度の非常に高い基調講演。参加者の中には村井氏の話を聞き逃さないようにメモを取る姿も見られた。
 Interop Tokyo 2005の基調講演のトップを切ったのは、Interop実行委員会の委員を務める慶応義塾大学環境情報学部教授 村井純氏だ。村井氏はInterop Media Cenvergenceが独立イベントとなったことをとりあげ、相互接続・相互運用性の大切さとこの世界を作り上げた重要性について語った。Interop Media Convergenceで最先端の技術を使って実現されているように、現在通信だけでなく放送のデジタル化が進んでいる。アナログ放送の停波も決定し、これからは無線=ノンワイヤーのデジタル化が急速に進む。これがきちんと取り組めるタイミングに差し掛かっており、今後5年間は非常に大きな変革の時期であると村井氏は言う。今までのインターネット通信と無線を使ったコミュニケーションの間でどのようにインターオペラビリティを実現するか、またメディアコンバージェンスを実現するかが問われていると述べた。

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基調講演レポート2
「インターネットサービスインフラの総括と未来展望」

今のネットワークを構成する技術や状況に対する説明を通じて、Interop参加者という新しい巨大なコミュニティへとメッセージを投げかける吉村氏。

 2本目の基調講演ではメディアエクスチェンジ(株)代表取締役社長 吉村伸氏が壇上に立った。今回のInteropのテーマ「Back To the Fundamentals」というキーワードの決定に大きくかかわった人物である。「ネットワークを導入・活用する上でこの世の物理法則を超えるマジックは存在しない」という強いメッセージから講演はスタートした。マシンルームの温度管理を例に挙げ、何かトラブルが合ったときに「知らなかった」では責任を取ることはできない。どのような原則でネットワークが成り立っているか知る必要がある、と続ける。吉村氏は今急速に進化・浸透するネットワークを成り立たせる技術について解説を行っていった。Interopに参加する人ならば既に知っている内容がほとんどなのだが、同じ場所で基調講演を聞いている参加者が吉村氏の言葉によって共通に認識を持ち、それが原則であると理解していく。まさに人と人との相互接続を果たすためのプロトコル作りが講演を通して行われた瞬間と言えるだろう。

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