プログラム委員会議長からのご挨拶
Interop Tokyoは インターネットを構成するための 相互接続性すなわち Interoperability を確立し、それから新しいイノベーティブなビジネスを創生することをそのミッションとして活動を続けています。 インターネットは、一般名詞化し、最近のIoTビジネスやビッグデータビジネスにおいては、「ネットワーク接続される」こと をインターネットと呼ぶようになっています。そもそものインターネットは、TCP/IPを核にして、さまざまなデータ転送装置・インフラと、さまざまなアプリケーションサービスを実現する装置とインフラ全体を意味していました。このインターネットを実現した TCP/IPを核にしたシステムは、企業システムやさまざまなサービスシステムに展開され、プライベートシステムとして、新しいサービスや機能を提供するように変化を遂げ、近年は、IoT(Internet of Things)に代表されるような、必ずしも、グローバルなインターネットには、接続されないけれども、コネクテッドな環境を用いたイノベーティブなビジネスが実現されようとしています。 このような、コネクテッド・システムは、次の段階において、相互接続され、最終的にはインターネットに接続されることになるでしょう。 その時には、従来の インターネット産業だけではなく、すべての産業セグメントが、コネクテッド・システム化され、新しいエコノミー(ビジネス領域)を創生・形成し、さらに、これらの エコノミーが コネクトされ、さらに、グローバル接続した、「コネクテッド・インターネット・エコノミー」を形成しなければなりません。
このような 動きに対応するために、Interop Tokyoでは、2016年の開催にあたり、テクニカルプログラムの構成を大きく改革することにしました。 カンファレンスへの参加者を、各企業における今後のビジネス戦略を企画・策定する方を主なターゲットとした内容にするというものです。 もちろん、Interop Tokyoは、技術を核にするという遺伝子は堅持しますが、技術を核にしたビジネス戦略の企画・策定に資する情報の提供を行うとともに、参加者の皆さまとの議論を行う機会を持つことを目指すことにしました。 そのために、セッションの時間を、90分から150分へと約1.5倍にして、より、深い議論が行われるようにしました。多くのベンチャー企業のエグゼクティブをお招きし、どのような新しい潮流が動きつつあるのかを掴んでいただくためのセッションを用意するなど、これまでのインターネットビジネスだけではなく、インターネットを用いた、あるいは、インターネット技術を用いた新しいビジネスプレイヤーの方々を講師としてお招きし、「コネクテッド・インターネット・エコノミー」に関する情報の整理とそれに基づいたビジネス企画とビジネス戦略の考察に資する議論を目指すことにしました。
20世紀のインターネットの方針は、地球上のすべての「人」を繋ぐこと、コネクテッド・ピープル、IP for Everyone でした。 21世紀のインターネットの方針は、地球上のすべての「モノ」を繋ぐ、コネクテッド・シングズ、IoT(Internet of Things)です。 IoT は、単に「モノ(Things)」を繋ぐものではありません。 「人」がつながることで、たくさんの イノベーションが生まれ続ける環境が構築されました。さらに、「モノ」がつながることで、産業セグメントや社会セグメントの論理的な障壁がなくなることになり、これまで、「コネクテッド」とはなっていなかった、ビジネス・エコノミーが「コネクテッド」な状況になります。これは、新しいビジネス・イノベーションが生まれ続ける環境へと向かいます。 これまでつながっていなかった「ヒト」が繋がり、「モノ」が繋がり、そして「カネ」が繋がる。「カネが繋がる」 ということは、エコノミー(経済活動)が繋がるという意味です。 2014年の Interop Tokyoのテーマは「To the Next Connected Worldへの挑戦」でした。2015年は、Connected World が産み出す、「Connected Economy」への船出をメインのテーマに据えました。 この動きを、より、加速させ、Interop Tokyoに関係するビジネス・ステークホルダを拡大することが2016年の方向性になります。
Interop Tokyoは、1994年にスタートし、インターネット関連産業のビジネスの最前線のショールームとしての役割を果たしてきました。既に、インターネットは全世界をビジネス領域とする社会・経済インフラとなりました。 2016年は、IoTに代表される新しい可能性を具現化する激しいイノベーションが、新しいビジネスセグメントで模索され、ビジネス化されつつあります。まさに、Think out of the box 広がり続ける「コネクテッド・インターネット・エコノミー」が、これまでのインターネット業界だけではなく、未開の空間とビジネスセグメントをも取り込みながら・巻き込みながら、進行しようとしています。 「インターネットの(新たな)覚醒」と言ってもいいかもしれません。
Interop Tokyo 2016に参加される皆様には、この機会を最大限に活用していただき、最先端のICT技術の動向と現状を把握し、ますます加速するインターネット革命を生き抜くに資する、叡智を発見・体験する契機としてご利用いただければ幸いでございます。
Interop Tokyo 2016 プログラム委員会議長
東京大学大学院
情報理工学系研究科 教授
江崎 浩