2016年6月8日から10日にかけて、千葉・幕張メッセで開催された「Interop Tokyo 2016」は、ネットワーク技術を核に、仮想化やセキュリティ、クラウドといった分野にフォーカスした展示会です。そして、文字通りこのイベントの基盤ネットワークとしての役割を果たしているのが「ShowNet」となります。
ShowNetはこの3年間「Scratch and Re-build the Internet」というテーマを掲げてきました。遠峰氏は、「ShowNetはこれまでIPv6やVLANなどさまざまなチャレンジを重ねてきました。現実の世界でも、インフラとしてのインターネットが行き渡ってきましたが、これはある意味『硬直化』と言えるかもしれません。それを踏まえ、新しいチャレンジとして、いったん今までのShowNetをばらして組み直し、次の姿を考えていく必要があるだろうという考え方から、『Scratch and Re-build the Internet』という三年計画を立てました」と説明しています。
3年前は、さまざまなサービスやアプリが花開いていることを踏まえ、ネットワークから見たデータセンターの姿とはどうあるべきかという観点から「tough core, soft edge, for future apps」というテーマを掲げました。続く昨年は、「ULTIMATE BALANCE」というテーマで、ネットワークとデータセンターが連携することで、どうやってユーザーに快適に使ってもらうかを検討しました。
2016年は「Scratch and Re-build the Internet」の集大成として「Infinite Challenge」を掲げ、過去2年間に試してきたさまざまな新しい技術、VXLANやEVPN/MPLS、OpenStackの活用、セキュリティ機器の連携といった事柄を、実験レベルから一歩進めて大規模に実装しました。
ShowNetではこのように複数の機器と技術を組み合わせることで、複数の機器でトラフィックを多面的に解析すると共に、セキュリティインシデントへの対応を半自動化し、少ない労力で適切にネットワークセキュリティを保てる仕組みを提案しました。また、昨年から試され始めたResource Public Key Infrastructure(RPKI)もフルに実装しました。これは、経路情報を検証する仕組みにより、不正な経路にトラフィックを送り込まないようにするものです。
随所に盛り込まれたネットワーク運用のための工夫
近未来のネットワークという意味では、Internet of Things(IoT)という要素も不可欠です。ShowNetでは、IoT機器をインターネットにつないで情報を収集する際の一つのモデルとして、NOCの各ラックに「いいねボタン」を実装しました。さくらのIoT PlatformとArcstar Universal Oneモバイルを活用して、閉じたネットワークで安全にIoT機器をつなぐモデルを示すもので、とかくセキュリティが課題とされるIoTに対する一つの答えとなるでしょう。
他にも、SDN対応ソフトウェアスイッチ「Lagopus」とプログラマブルなFPGAを組み合わせたOpenFlow処理の高速化、Precision Time Protocol(PTP)を用いたマイクロ秒単位での高精度な時刻同期や、あえてアクセスポイントを減らすアプローチによる「きれいな」無線LANの提供、十種類を越える運用ツールによるネットワーク監視とSlackの連携、「抜けにくい電源ケーブル」などを活用したすっきりしたラック・ケーブル類収納など、挙げていけばきりがありません。おそらくこうしたさまざまな工夫は、これからのネットワーク運用にさまざまな形で応用されていくことでしょう。
ネットワークの進化が新たなサービスを生み、 新たな挑戦が生まれる
これを支えるのが、NOCチームとShowNet Team Member(STM)と呼ばれるボランティアのエンジニア、それに機器を提供するコントリビュータです。産学、さまざまな組織から集まったトップエンジニアの数は、のべ396人に上ります。彼ら、彼女らが、コントリビュータから提供された約74億円分の機器を設置し、実際の構築作業だけでも2週間かけて設定を投入し、運用することでShowNetは実現されています。