Interop Tokyo 2008

NGN もいよいよ正式サービスを開始し、一般家庭へのIPネットワークの普及には今後一層拍車がかかると予想されます。インターネット技術はもはやデータ通信だけでなく、すべての通信技術の基盤となりつつあるのです。公共インフラやホームネットワークとして要求されるセキュリティ水準を達成するためには、あらゆる角度からのアプローチが必要です。

web2.0 に代表される新世代環境におけるサイバー犯罪の中には、無線LANの基地局を模倣するWiPhishingのような巧妙な手段も登場し、増加するホットスポットサービスへの影響が懸念されます。企業の情報漏洩事故は相変わらず続き、プライバシーや匿名性が注目される一方で、アクセスフィルタのもたらす弊害も指摘されています。
技術的には、2010年問題とも言われる暗号の危殆化問題が目前に迫っています。このような状況を乗り切るためには、強いCIOを中心とした人材育成が重要であり、事故を前提としたインシデントレスポンス体制の整備やデジタルフォレジック技術の導入が急務です。

以上はすべて今年のプログラムに含まれているキーワード。注目セッション目白押しです。

アクセスネットワークの高速化に始まるネットワークのブロードバンド化は大きな広がりを見せています。
安定したブロードバンドネットワークがどこでも使えることになればもう手元にコンピュータ・リソースを置いておく必要はなく、データセンターにおいたサーバーとストレージを使い、仮想化技術によってコストセービングをしながら信頼性および柔軟性の高いシステムを短期間に構築することができます。　

また、ブロードバンド化が進展し、IPｖ６が必須となった時代のＩＳＰの作り方は従来と大幅な変化があるものと思われますし、ＩＰｖ６への移行も具体的な方法の議論をする時期に来ています。さらに、仮想化については最近急激に進展してきた技術であるため標準化や運用手法を中心に解決すべき問題はたくさんありますし、仮想化の応用例として知れわたっているＳａａＳも導入には十分な検討が必要です。そしてこれらを支えるデータセンターについて言えば、昨今の環境問題への議論の高まりとサーバー等の高密度化によりその構築・運用管理には高度な知識と技術が要求されています。

以下のセッションではこれらのそれぞれのテーマに対して構築・運用等の第一人者をお招きし、課題やその解決の方向性を探っていきます。ご期待ください。

ビジネスにおけるインターネット利用はもはや当たり前ですが、サイバー攻撃のビジネス化も進んでいます。攻撃ツールはインターネット経由で売買され、仕事としてクラッキングその他のセキュリティ攻撃を行う者が増加しています。世界中で猛威を振るうコンピュータ・ウイルスは影をひそめましたが、その代わりに地域的、あるいはターゲット限定的な攻撃の増加が指摘されています。

残念ながら、いまやインターネット関連のセキュリティ侵害や障害が、 多くの企業にとってビジネス遂行上、無視できないリスクとなってきているのです。

さらに重要なのは、対内的な情報セキュリティ対策です。
昔から指摘されているように、セキュリティ事件の多くは、社員あるいは関係者によって引き起こされています。社内ネットワークとインターネットの境界の管理は、企業の情報セキュリティ対策の入り口に過ぎません。
特許関連情報をはじめ、各種の情報がそれぞれ企業にとってどのような価値を持つか。
その流出はどれほどの損害をもたらすのか。保護のためにどんな手が打てるのか。
万が一事件が発生した場合に、損害を最小限に食い止めるにはどういう手順でどのような措置を講ずるべきか。企業はこうした点を考えざるを得なくなっているのです。

お薦めセッション

インターネット接続のワイヤレス化は、今日当たり前のことになってきました。場所の制約からの解放、ケーブルからの解放は、一度使ったら手放せない便利さです。WiFi、携帯データカードは身近なものですし、来年にはWiMAXや次世代PHSがサービス開始予定です。これらの無線アクセスをどう使い分けるか、何が主流になるのか、興味はありませんか？

ワイヤレス化は、ネット設計に新たな課題を突き付けています。人間が人工的に設計を積み上げてきたIPの世界と違い、無線通信は物理法則に支配された自然を相手にしなければなりません。無線を上手に使うためには、無線通信技術の基礎を知ると同時に、経験則に基づく設計ノウハウが有効です。また、ワイヤレス接続はセキュリティ面でも新たな課題を内包しています。誰でも聞けてしまう無線アクセス区間の盗聴対策、接続先アクセスポイントの認証、アイデンティティ管理等に目を向けないと、大きな社会問題を引き起こす危険があります。これからは、ネット技術者、ネット設計者も無線技術を理解し、無線アクセスのセキュリティ対策に目配りすることが求められています。

一方、デバイスが動き回れるワイヤレス接続の世界では、デバイスの位置情報という、アプリケーションから見て新次元を提供します。日本は、携帯電話の位置情報利用サービス(LBS)で世界の先頭に立っていると言えるでしょう。位置情報をどのように利活用するか、アプリケーション開発者として腕の見せ所です。
これらのセッションは、このような課題の理解と解決策のヒントの第一歩となるでしょう。

企業における技術戦略ならびに経営戦略の重要性は、ますます増大しており、企業の存続と発展に直接的な影響を与えます。

運用現場や開発現場の実状や方向性を正確に把握して、今後の方向性の展望と将来性を把握することも重要ですが、企業の技術戦略と経営戦略の検討・策定にあたっては、技術の詳細のみならず、より広い視野に立ち、技術・市場・社会など多面的て俯瞰的な知見が必要となります。 革新的な技術イノベーションは、従来のビジネスモデルとは根本的に異なる力学に基づいた技術・経営展開をもたらすものであり、企業における技術戦略と経営戦略の企画立案に関わる方々は、常に、最先端の革新的取り組みの本質を正確に把握しなければなりません。