3年後のInternetをNOCチームが具現化する
リアリティへのカウントダウン
Interop Tokyoは次世代のインターネットを見据え、毎年最先端のネットワーク環境をを構築して出展社だけでなく、来場者が実際に体験できる場を提供している。その根幹となるのがNOCチームとSTMメンバーによって構築・運営される基幹ネットワーク「ShowNet」だ。Interop Tokyo 2008のShowNetの見所についてNOCメンバーにインタビューを行った。
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インタビュー:神保暢雄
写真:池田啓輔(J-CAST)
編集:J-CAST
ShowNetはこんなに変わった
15年の歴史を振り返る
今回で15回目の開催を迎えたInterop Tokyo。その足跡について慶應義塾大学の重近 範行氏に振り返っていただいた。
「大きく分けてInteropの15年は、インターネット黎明期、ネットワークの広帯域化期、そしてアプリケーションの多様化期の3つのフェーズがあると思います。インターネット黎明期ではメディアの数が今の比じゃなく、回線の種類も非常にたくさんありました。コネクタの種類もバラバラで機材がつながらないとか、同じコネクタでも中身が違うといった時代です。まさにInteropが目指すインターオペラビリティの実験の場としての時代とも言えるでしょう。
それがネットワークの広帯域化期に入ると、そのほとんどがイーサネットに方向性を向けて、それまで多種多様だったものが急速に絞り込まれた感がありますね。
もちろんDSLといった新しい技術を発信できたのはInteropの功績だと思います。
第3世代に入ってからは規格やインターオペラビリティのチェックは、IPv6と広帯域の部分に収斂してきました。そこで本来はエンタープライズセキュリティやネットワークセキュリティといったSI的な部分にトピックが集中するはずでした。しか し実際にはIPネットワークに寄った構成が中心になったと感じています。
15年目を迎える今年は、潤沢なリソースがあり、その中で目的に合わせたネットワークをどう構築するか、という点に意識が向いていると思います。リソースの増加に伴って要素技術も増え、どのように組み合わせるかが重要になってきます。また今年のセキュリティのチャレンジのように色々なレイヤーにまたがった技術をどうオペレーションしていくかが重要になります。これからが難しい時代だと思いますし、ShowNetとしてチャレンジのし甲斐のある時代でもあるといえるでしょう」
Interop Tokyoのゼネラルプロデューサの佐藤 孝氏は次のように語る。「1994~95年のInteropでは、インターネット自体を相互接続するための最新の機材が登場し、『光った』ベンダーが多数見られた時代でした。1996年には技術の標準化が始まる と同時に、そのネット ワークをどのように使うのかを、新しいビジネスと共に金融業界等の他業種も注目してくださり、大々的にアピールできた時期といえます。その取り組みのおかげもあってインターネットの用途は広がり、利用者は増えていき ます。1998年からは様々な企業の皆様がASPサービスを提供し、世の中ではブロードバンド化が進み、2000年にはバブルの絶頂を迎えたわけです。
サービスや技術が一旦出揃った状況から、もう一度インフラから考えてみよう、というのが今現在のフェーズであると思います。ここ3~4年はインターネットがビジネスに欠かせないものになり、Interopもエンタープライズに向いてシフトしてい ます。例えばグリーンITは1つのキーワードとして、社会的なコンセンサスを持ったなかでまずは企業がどう取り組むかに注目が集まっています。このような機会には、必ず様々な企業がInteropで力を出していただけると思いますし、それを実際の リアルな物としてShowNetで見せることができると考えています」
All About ShowNetとNOCツアーで
ShowNetの奥まで知り尽くそう
昨年のInteropでは、ShowNetで使用した機材すべてにNOCチームの担当者がコメントを書き込んだパネルを展示した「All About ShowNet」が好評を博した。今年ももちろんスケールアップして展示が行われる。
「以前はインターオペラビリティの実験的な比重が大きく、またトラブルも多かったのでそこに時間がとられていました。しかし、ここ数年で蓄積されたノウハウやスキル、そして機器の向上によってShowNetの『Show』の部分により力を割ける余裕がでてきました。
昨年はパネルでの展示でしたが、今年はNOCのブースがガラス張りになる予定なので、ラック自体にコメントや皆様からの質問を書くスペースを用意して、実機とともに見ていただけるようになる予定です」(門林氏)
さらに毎年人気のShowNetツアーだが、こちらももちろん増量でお届けする。今年のShowNetツアーについて、NECの金海 好彦氏は次のように語る。
「今まではNOCがエントランスにあって、広い会場を回るために話の時間が短いという問題がありました。しかし今年はNOCブースがホール内に設置されることもあって、
説明により多くの時間が取れると思います。ただ残念だなと思うのは、解説を聞くだけで、突っ込んだ質問をする方が少ないことです。
NOCチームもいろいろ策を考えていますが、やはりShowNetをいちばん良く知ることができるのがShowNetツアーです。枠の問題はありますが、ぜひツアーに参加していただいて積極的な、我々が困るくらいの質問をぶつけてください」
ShowNetは人材育成の場?
ShowNet Team Memberになってスキルをアップ
今年のShowNetはInterop Tokyo 2007終了後からすでに構築がスタートしている。
広大なネットワーク空間を短期間で会場に設置することは、NOCメンバーだけではなし得ないものだ。それを影で支えているのが、一般の技術者が参加してNOCチームをサポートする「ShowNet Team Member(STM)」だ。
自身もSTM出身のNOCメンバーである慶應義塾大学の堀場 勝広氏は次のようにSTMの魅力を語る。
「STMには、テクニックを学びたい人、新しい技術に触れたい人、この業界の人と交わって関係を作りたい人など、様々な人が集まっています。STMプログラムにはそれらの欲求を満たしてあげられる土壌があると思います。最近はSTMの人数は縮小傾向
にありますが、それに反比例するように優秀な方々に集まっていただいていますから、よりその環境は整ってきてるんじゃないでしょうか。
当初は応募者の中から書類選考を行っていたのですが、3年ほど前から説明会を設けてSTMについて知っていただく場を作り、さらに昨年からは実際に応募者と顔を合わせて話をして参加していただく形になりました。以前は実際に参加してもらって
から何を担当してもらうかを決めていたのですが、今はこれを担当してもらおうと事前に考えています」
STMのディスパッチャーを務める(株)ユビテックの清水 隆宏氏も、昨年までSTMに参加していた1人だ。「もともと私もインターネット業界に所属していたのですが、Interopというイベントは知っていても、正直、このようなコミュニティがあ るとは知りませんでした。知人からSTMというShowNetの構築に参加できるプログラムがあることを知り、これはすごいと感じて参加しました。
私のようにSTMの存在を知らない人は世の中に沢山いるのではないかと思いますし、知ったら参加したいという人も多いでしょう。当然その人の適性やスキルにもよりますが、ShowNetでやりたいことがあれば、自分からチャレンジしてほしいと思います。 ただ、参加したての段階では、仕事をお願いする側もその人がどういうスキルを持っているか、どういうことをやりたいかといった事が判らないということもありますので、十分に仕事を任されない事もあります。
しかし、そこで諦めないで地道な下積みを続けて行く中で、自然と周囲の人たちとの人間関係も形成されると共に自分のスキル
も認められ、重要な仕事を任されるようになっていくものです。また、その中ではそれまで認識できていなかった新しい自分が見つかってくるのも、STMに参加する面白さの1つだと思います。 今はNOCチームの一員となりましたが、STMに参加した経験を活かしつつ、これから参加する人たちと同じような考えを共有してもらうためにはどうしたらいいかを考えながらやっていきたいですね」
STMに参加した人は会期終了後のアンケートで「来年もSTMとして参加したいか」という質問に対してほぼ100%「また参加したい」と答えているという。実際、今回のインタビューに参加していただいたNOCメンバーにSTM参加経験を聞いたところ、ほぼ全員がSTM出身であった。
「STMに何年も参加しなくてはNOCチームに入れないというわけではないんですよ。1
年目に力を発揮して、NOCの仕事に対してきちんと不満や意見を表明してもらえれば『じゃあきみ、来年は頼むよ』といわれると思います。でも最近引っ込み思案な人が多いのか、文句があっても自分から言う人は少ないですね(笑)」(重近氏)
STMには自分のキャリアパスを考える上でのメリットもあると堀場氏は言う。
「STMに参加すれば技術が身につき、様々な人と知り合いにもなれます。継続して参加していれば、もっと色々な人とお付き合いできるようになりますし、それが仕事につながって行くかもしれません。広くインターネット業界を見た場合には、STMは
純粋な意味で人材育成の場だと思いすね。
そういう意味では学生の方にこそ大きなメリットがあると思うかもしれません。
しかしすでに就職されている方にもぜひ参加していただきたいと思います。ShowNetに関わって見聞を広め、自分の職場に戻って啓蒙してくれる人が出てきて欲しいですね。こういった活動とSTMプログラムを通じてできた人脈から、異なる業種が連携して新しいビジネスマーケットの開拓につながっていくようなことがあれば素晴らしいですね。
このようなことを含め、今後どのような人たちをエンカレッジしていくか、ということがSTMプログラムの考えどころではないかと思います。
「私自身もSTMやNOCを通じて、これまで一緒にやってきて、これからも一緒にやりたいなと思う人とたくさん出会ってきました。STMに参加し、Interopという限られた時間の中で自分をよりよく表現し、人の輪・知識を広げる場としても役立て頂け
ればと思います」(長谷部氏)
Interop Tokyo 2008に参加してNOCチームとSTMの活躍の結果であるShowNetを体験し、来年はあなたもSTMに参加してみてはいかがだろうか。
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