Interop Tokyo 2011 - TOKYO | 6-10 JUNE,2011

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IPv4枯渇問題とIPv6への移行への解とは!

Interopには「最新ネットワーク機器の展示会」という側面もありますが、その中核をなすネットワーク「ShowNet」は最新機器や最新技術など用いた相互接続実験を通して利用可能な近未来のネットワークを構築するという意義があります。すでにShowNetではIPv4が枯渇すると言われるはるか以前の2000年からIPv6への移行を進めており、ようやく今こそ世間がその状況を認め出したと言えるでしょう。本記事では、ShowNetの構築に携るNOCチームメンバーとShowNetへ機器提供をしていただくコントリビュータの皆様を交えて、3、4年後のネットワーク像について迫ってみたいと思います。

関谷氏:

-昨今、IPv4の枯渇やIPv6への移行の必要性が騒がれ出しています。IPv4の枯渇に関しては様々な意見がありますが、数字的に見ても否定しがたい事実でしょう。もちろんIPv6は注目のキーワードになっており、非常に端的なのはInterop運営事務局にもIPv6の飛び込み営業があったということがそれを表していますね。そこで今回の座談会では、レイヤー1から7までの皆さんに揃っていただいて、ユーザからの反応という部分でお話をいただければと思います。
小川氏:
-弊社はWebサーバでページを生成しない方式のWebエンジンを製作しています。問い合わせを受けるなかで感じるのは、IPv4枯渇のニュースが報じられた後、レベルの低い質問が増えたという印象があります。地デジのようにいつまで使えるのかといった話から、本当にIPv4が枯渇すると困るのかといったものなどが良い例ですね。
関谷氏:
その問い合わせしてこられる方というのは、今まで気にしていなかったという方からのものがほとんどですか?
小川氏:
そう思います。実際のところ私がIPv6化が進んでいないのはグループウェアやアプリケーションなどのソフトウェアの部分だと思います。下のレイヤーはどんどんIPv6への対応が進んできているのに、上のレイヤーではまだやる気が見えない、もしくは「やらなければいけないのか?」的なイメージを持っているようですね。
関谷氏:
今アプリケーションという話が問題という話が出ましたけれど、アプリケーション開発の側からの意見はありますか。
渡邉氏:
NOCメンバーの渡邉です。一年前にIPv6の社内テストを行った際に様々な問題が発生して、最終的にあきらめたケースがあります。正直なところIPv6になったことでどんな影響が出るのかが解っていない状況です。
奥澤氏:
アプリケーション側から見ればIPv4にしろIPv6にしろ相手先が名前解決されていれば、アドレスは意識しないで済みます。なので上位のアプリケーションでは意識しなくて良いのではないかと考えています。
渡邉氏:
そうですね。名前解決はアプリケーション側の仕事ではありません。google.comはIPv6になってもgoogle.comというドメインだと信じているので、そこがIPv6かIPv4かは関係がありません。
関谷氏:
そうすると、IPv6移行特になにか開発体制を変える必要はないと?
渡邉氏:
それが無いのが次世代のネットワークでしょう。
一同:
(笑)
関谷氏:
さっそく1つ目の解がでてきましたね。逆に顧客の方から「IPv6でも動くように作ってください」という注文を受けたことはありませんか?
渡邉氏:
そこまでお客さんの側は意識していません。IPv6の世界というのは地デジと同じように、自分が意識しなくてもルータを対応品に買い換えれば対応できると考えているようですよ。
栗山氏:
L2L3スイッチメーカーである弊社の視点では、提供先がサービスプロバイダか一般企業ユーザかで大きく違いますね。サービスプロバイダではIPv4/IPv6の両方で動く製品じゃないと困ると言われます。これに対して一般企業ユーザの場合はIPv4で運用した上で社内はNATを使ってプライベートアドレス運用をされるケースが多いようです。もちろんアプリケーション側の問題もあるのかもしれませんが、IPv4+NATで大丈夫な状況下でIPv6移行が必要なのか判断できずに踏み切れていないケースがほとんどだと思います。
関谷氏:
確かに企業ユーザの場合は社内ネットワークがプライベートアドレスで運用されていても問題ない所が大多数でしょう。しかし一方で「外向けにサービスするサーバではIPv6がそろそろ必要だ」と言われた場合にはどうなってくるのでしょうか。
田中氏:
弊社では企業ユーザが多いので、グローバル<>プライベートという形でトランスレータを噛ませる仕様のシステムを使われるケースがほとんどです。IPv6に移行してもこの状況は変わらないと思うのですが、一方でアプリケーションを使る側がトランスレータを噛んだネットワーク越しに組むという感覚がなくてトラブルが発生するケースが多かったですね。NATでは問題がなくてもプロキシを通すと問題が出るという例もありました。同様に、内部的にはIPv4で組んであるけれど、遠隔管理はIPv6のネットワーク上にトンネルを通して行おうとした場合にトラブルが出るのではないかと考えています。実は最近IPv6に対する問い合わせが減っているので、実際に運用がはじまる4月から6月にかけて大きな問題が出るのではないかと思います。

関谷氏:
今問い合わせが減っている理由というのはなんでしょうか?
田中氏:
想像ですが、問い合わせが多かったのは、国がIPv6の指針を出して「地方自治体は対応しなさい」と言った時期でした。しかし実際にそれから5年ほどの間なかなかIPv4が枯渇せず、最終的には「IPv4は枯渇しない」と言い切った人も現れてしまった。
一同:
(笑)
田中氏:
こんな状況の中で危機感が薄れてしまい、機器を買えば対応できる、ユーザが考えることではない、といった認識が広まったのだと思います。実はアプリケーション側ではIPv4に比べてIPv6は桁数が増えるので、記憶する部分もそれに合わせて増やす必要があります。しかし危機感が無くなってからは問い合わせでIPv6といわれる確立がほぼゼロになり「これで大丈夫なのか?」と逆に心配になってきます。
関谷氏:
そういう状況に確かにありますね。日本ではIPv6に対して数年前に騒いで政府も対応に動いたのですが、でも無くならないというイメージが出来て現状にいたったと。しかし今年1月に報道があって、また多少変わってくる状況なのではないかと思ったのですが、目に見える形では現れていないという感じでしょうか。
宍倉氏:
NOCメンバーの宍倉ですが、一企業の人間として答えるとすれば、1月以降に問い合わせは増えていますね。これまでは研究所などからの問い合わせが中心でしたが、最近は一般の方から聞かれるケースが増えました。もともと気にしていた人がトーンダウンした代わりに裾野が広がったというか、新しい層がIPv6を意識し出したというのが現状なのだと思います。
渡邉氏:
1月の報道前後でどれだけIPv6移行とIPv4枯渇の話題が出ているのか、Q&Aサイトで集計してみました。実は報道後にそれぞれ増加しているのですが、顕著な増加ではないようです。話題も例えば「IPv6を一所懸命やっているが、上司を説得できない状況です」といったものがメインですね。
宍倉氏:
それは新しい裾野が増えたのではなくて、気づいていた人が寝てたんだけど、また起きたような状態なのでは?
関谷氏:
「ほれ、見ろ」みたいな? それは一番よくないですね。
一同:
(笑い)
関谷氏:
そうこういっても4月にコンシューマ向けのサービスも始まってしまった訳ですよね。当初は追加料金制のところがほとんどで、一部の物好きの方しか利用しないと思います。
渡邉氏:
確かにそういう話はあるでしょうね。
関谷氏:
そういう意味で、まずIPv6を一般ユーザが使える状態ができてしまう。顕著に少ない時期なので、使えないで終わるならまだしもIPv6ユーザがあることによって「有害だ」というレベルの問題が起こってしまうと、移行そのものが進まなくなってしまいます。数値的にはすでにIPv4枯渇は起こっているわけですが、これからの問い合わせがIPv4が無くなることを心配しているだけなのか、そこから一歩進んでIPv6導入に対しての質問なのかがポイントになるでしょう。
服部氏:
先ほどエンタープライズ系のアプリケーションの対応についてお話が出ていましたが、やはりエンタープライズはプライベートIPアドレスを使うことで当分IPv4で行けるとSIerも読んでいるのだと思います。一方でコンシューマ系は一般ユーザからの直接のアクセスが多いのでIPv6対応という点では急がざるを得ない状況にあると言えますね。
関谷氏:
一般ユーザ側がIPv6でアクセスできるようになれば、コンシューマユーザを多く抱えているような企業ではIPv6対応を急ぐ必要がありますね。しかし、まずはネットワーク、続いてサーバ、最後にアプリケーションソフトウェアが対応するという段階を踏む必要があります。どの段階で慌てることになるんでしょうか。
高木氏:
今はまだIPv6でのアクセスが現実的に無いのでサイト事業者さんにもあまり危機感はないと思いますね。我々はロードバランサーを提供していますが、多くの企業が基本的にIPv6 Readyの準備をしています。しかしコンシューマ側で多くのユーザがIPv6に移行したときに、それをすべて裁ききれるかなという問題があります。ただし、まだ現実的な問題にはなっていませんが。
川島氏:
弊社は事業者向けのホームゲートウェイやコンシューマ向けのブロードバンドルータを開発しています。IPv6は10年くらい携わっていますが、コンシューマ側でもルータ側では準備が整いつつある状況ですね。
岩本氏:
昨年も参加させていただきましたが、NTPを使って時刻配信するタイムサーバの開発を行っています。こちらはすでにIPv6対応しているので、ネットワーク上の時間管理という点ではIPv6でも問題なく行えます。
奥ノ坊氏:
弊社は昨年もトランスレータをShowNetに出させていただきました。現在、そういった製品を中心に様々な企業を回っておりますが、社内社外問わず色々な可能性が論じられています。今後IPv4が利用し続けられるのは3年なのか5年なのか、はたまた10年なのか20年なのか、もしかするとドラスティックにボンと切られるのかという点に興味がありますね。
武末氏:
今年はPOE+対応でバッテリー搭載のL2スイッチに加え、新しい試みでLED照明に1つずつIPを振って、効率制御をするようなモジュールと一式制御するサーバを一緒にコントリビューションしています。LED照明を1個1個IP制御するためには結構な数のIPアドレスが必要で、ビル間、拠点間制御を行うにはIPv6が必要だと感じています。
宝来氏:
私は普段、レイヤー4/レイヤー7スイッチの開発をやっているのですが、今はまだIPv4でしか動作していません。今後のIPv6への移行は大きな転機になると考えています。

関谷氏:
ShowNetとしては2000年からIPv6対応を開始してきました。最初はトンネル技術でIPv6をIPv4の上に通すというところからはじまり、2003~2004年にはデフォルトでIPv6を提供しました。2006年にはフルデュアルスタック化して「コントリビューションしていただく機器はデュアルスタックでないとお断りします」というような勢いで進んできました。最終的に今ShowNetで利用されている機器は普通にIPv4、IPv6が利用できる状況になりました。ただ実際のところアプリケーションレベルなどでは足りない部分もまだあると言わざるを得ない状況です。アプリケーション開発の現場では、IPv6についてどう思われているのでしょうか。
宍倉氏:
ネットワーク自体は置いておいて、どちらかといえばCPUが仮想化されるという発想が主流で、次世代ネットワークもネットワーク自体が仮想化されてアプリケーション側に提供されると単純に考えているのではないかという印象があります。
服部氏:
確かにそれはありますね。一部のアプリケーションベンダーではLXNのことしか考えておらず、IPv6は考えていないようでした。まずLXNのことをやっていれば、当分の間ユーザに対してデュアルスタックでIPアドレスが振られるので、IPv4のコネクティビティを当分の間保っていられることを前提にしているようです。しかし今のOSの実装ではIPv4とIPv6のコネクティビティがあった場合にIPv6だけ使ってしまうわけです。アプリケーション開発側としてはIPv4が使えない人だけがIPv6で接続するというスケーリングで考えて設計するわけですが、実際にはIPv6が使えればそちらを優先するため問題が発生する可能性は非常に高いと思います。
関谷氏:
デュアルスタックの環境になるとDNSサーバにAAAAをつけた時点でアクセスが集中する可能性が出てくるため、試しに付けるというのはどのくらいアクセスが集中するか予想できずに恐怖かもしれないですね。
服部氏:
まさしくコンテンツプロバイダの中ではどきどきしている状態ですね。
関谷氏:
今はまだ大丈夫だと思いますけれど、一気にくる可能性がありますね。
一同:
(笑)
関谷氏:
先日、短縮URLのbit.lyが一時期だけAAAAを通したんですが、最初IPv6 to IPv4のアドレスでした。その指摘を受けたのか今度は「::+IPv4アドレス」のようなものを登録して、最後には消えましたね。一部では「::1」を登録している所もあるらしく、やはり話題になってみたからAAAAをつけてみようか、みたいなノリでやっているところもあるようです。
田中氏:
DNSの挙動も心配ですね。特にDNSを古いものが含まれているとIPv6に対してどう対応しているかが問題になりそうです。
川名氏:
そうですね、どこのDNSを引くかという問題はありますがシチュエーションとして遅延が起こる可能性がありますね。
田中氏:
そういう意味ではIPv4とIPv6を両方一度に聞かないと、ほんとはDNSレベルでの遅延なのにアプリケーション側の責任にされそうで怖いですね。IPv6に対応した時のイメージが悪くなりそうです。
宍倉氏:
ちょっと詳しく聞きたいですね。AAAAとAが返ってくるはずが、AAAAがなければすぐにAに行くという話しがまず1つあると思います。しかし今の話ではAAAAは返ってくるけれど、そこに到達できないという話ですか?
田中氏:
実装上の問題のあるDNSサーバがあって、何に対してもAAAAしか返さないものもあるんですよ。
宍倉氏:
それでAAAAとAのDNSクエリーを同時に出すべきじゃないか、とおっしゃられているわけですね。
田中氏:
本当は負荷を考えたら1個ずつクエリーを出すべきなんですよ。しかし遅延の問題がでてくるのではと考えたときに複数クエリーの発行が必要かもしれないわけです。
関谷氏:
それは「未来のネットワークだからケチケチせずにどんと行け」みたいな解決策を考えているのでは?
田中氏:
そういう話になってしまうんですかね。
岩本氏:
実際、Cromeみたいにプリフェッチをあれだけ動かされるのが標準になるときついと思いますね。話は違ってきますが、NGNでIPv6の提供をはじめたとして、多分IPv6オンリーで安い価格体系がはじまったとしたら、IPv6についてよく知らないコンシューマユーザがIPv6オンリーにしてしまうケースが出てくると思うのですよ。それに対して企業側は「うちのホームページはIPv4にしか対応していないから見えない」という心配が出てくる。結局IPv6オンリーのコンシューマが増えるのか、増えないのか。それによってIPv4とIPv6の二重投資をいつまで続けるのか、という問題もでてきます。結局キャリアの企業戦略によって左右される部分は大きいでしょうね。
服部氏:
個人的にアンケートを採ったのですが、どのくらいの期間IPv4とIPv6を共存させるかという問いに対して日本のキャリアは結構長い期間、例えば20年くらいを考えているようです。逆に海外では数年で巻き取りが終わるというイメージを持っていますね。岩本-そういう意味では海外主導で日本も変わるという可能性が高いですね。結果的にアクセスできない環境が日本に残ったとして、日本人だけを相手にコストをかけるわけには現実的には行かないですから。
岩本氏:
そういう意味では海外主導で日本も変わるという可能性が高いですね。結果的にアクセスできない環境が日本に残ったとして、日本人だけを相手にコストをかけるわけには現実的には行かないですから。
関谷氏:
日本のキャリアが20年はデュアルスタックでと言われているのは意外ですね。本当に20年でIPv4をすべて巻き取れますかね。20年で巻き取れればすばらしいですね。インターネットの世界で20年というタイムスケールが想像できないです。3年後を予想するという今の座談会ですら誰も答えを出せないのですから。
一同:
(笑)
川名氏:
丁度狭間域にあると思いますよ。エンドユーザの利用形態によって幅広いソリューションの展開があるのが理想ですし、実際にトランスレータやNATを活用してIPv4が生き残るという可能性もあります。しかしパフォーマンス的にはどうなのかという新たな問題も出るでしょうね。

関谷氏:
実は日本はIPv6先進国のはずだったんですよね、一応。「早めにIPv6に移らなければいけない」と時の首相に言わせてしまったがために、IPv6先進国を歩むはずでした。しかしタイミングをはかるのが下手な日本ということで、盛り上がり、盛り下がり、知らぬ間に追い越されている、というような状況になってるのではないでしょうか。多分、海外ではもっとドライにサービスを打ち切るケースもあると思いますが。
栗山氏:
製品ベンダーとしては世界中に向けて製品を開発しますので、国によってまだまだIPv4というところもありますね。もちろんIPv6の普及は進むでしょうが、結果として当分の間は共存していくことになるでしょう。
宍倉氏:
なので、日本も世界もあまり変わらず共存していくんだという認識ができそうですね。
関谷氏:
ところで素朴な質問ですが、ここにいる皆さんの会社のWebサイトはいつごろIPv6に対応されますか?
岩本氏:
自社だけなら簡単なのですが、リンク先が当分やる予定がないと難しい問題になりますね。
服部氏:
弊社は皆さんご存知の通りWorld IPv6 Dayに参加するので、すぐにでも対応します。ただIPv6化したことでIPv4からつながらないユーザが出ると困るので、数日で元に戻る予定です(笑)。
関谷氏:
ちょっと意地悪な質問でしたね。自社でWebサーバを持っている企業の方は予想できるでしょうが、CDNを通している企業ではそちらの対応状況に影響されそうですし。
宍倉氏:
いくつかの大企業も一応昔からIPv6移行を考えていますが、ようやく検討がはじまった段階です。言い方が変ですが「ようやく動き出した」程度で、時期が見える状況じゃないですね。
関谷氏:
少し話を戻して、IPv4枯渇対策としてIPv6にネットワークを移した場合に何が足りていないのか考えてみたいと思います。例えば知識以外に、具体的に何が足りないと思われますか?
田中氏:
足りないものといえばDDNSです。IPv6対応のDDNSがほとんどなくてSOHOなどでVPNを張ろうとしたときにIPv6だと使えないという問題があるんですよ。
関谷氏:
確かにエンタープライズ用VPNは必要ですね。VPNでIPv6対応の製品はあまり存在していないような気がしますが、いかがでしょうか?
川名氏:
弊社機器では対応予定はありますが、まだ一部のユーザからの要望しかないので、開発の速度もゆっくりなのが現状です。
関谷氏:
弊社機器では対応予定はありますが、まだ一部のユーザからの要望しかないので、開発の速度もゆっくりなのが現状です。
田中氏:
そのおかげで試すことすらできないという状況になってしまいます。
宍倉氏:
事業者さんはどういう風に返事してくるのですか。
田中氏:
今「対応している」と言っているような事業者は別として、大抵はナシのつぶてになります。
宍倉氏:
返事がない。
田中氏:
そうです。少しでもIPv6を気にかけているところはすでに対応について発表済みですが、逆に何も表明していない所はナシのつぶてになります。
宍倉氏:
社内でもひっくり返っているのでしょうね。
関谷氏:
データセンタやサーバでクラスタが組まれているケースがありますが、そこではIPv6化の準備は進んでいるのでしょうか。単に意思決定の問題だけで移行できるならよいのですが。
宍倉氏:
去年ShowNetでVRPv3の相互接続実験をしていましたが、その後はどうでしょうか。
佐藤氏:
それほどIPv6に対するリパーメントがないので、実際に運用するシーンにはまだいたっていないという感触はあります。
宍倉氏:
そういう要望を持ったユーザがきたときに、自信をもってやれますか?
佐藤氏:
難しいところがあります。ユーザ側がIPv6での運用を理解できているか、また我々もそれに対して理解があるかという不安があります。

関谷氏:
単純に冗長化や負荷分散などについて、完全とは言えないにしても機器としては揃ってきている段階なんでしょうか。
佐藤氏:
結局はリンクローカルでやりたい、やりたくない、ユニキャストでやりたいとか、もしくはそれが勝手についてしまったときにどうなるの、とか色々な条件を考えたときにきちんと運用しきれるか、提案できるか、というのが心配ですね。
関谷氏:
ではファイアーウォールはどうでしょう?
服部氏:
一応、シスコとしてはエンタープライズ+IPv6環境で一番に対応しなければいけない部分はファイアウォールである、ということを表明していますので製品も用意しています。外からの攻撃を防ぐ、内から意図しないトラフィックが生成されてしまうという両面でエンタープライズセグメントでは懸念していまして、とにかくファイアウォールだけは用意するというメッセージを出しています。
田中氏:
その話でちょっと質問があるのですがいいですか? ほとんどのベンダーさんがIPv6に対応すると保守費用が上がってしまいます。今現在の世界の経済状況からすると予算が通らない企業が多くなってしまう。技術的に不足しているという話ではなくて、IPv6に対応すると予算が高くなるというのが壁になっていると感じています。
宍倉氏:
保守の話とソフトウェアのライセンスの話しがあると思うのですが、どちらもですか?
関谷氏:
どちらもなんじゃないですかね。
一同:
(大爆笑)
田中氏:
買うときは機器の予算としてとりますよね。ですから機能として満たしていれば良いんです。しかし保守費用は経費なので、そこが倍になると導入できないというケースが起こり得ます。そういう意味でIPv6だけで運用すれば安くなるというプランはできないものでしょうか。
関谷-3~4年後にはIPv6が標準機能として入って、値段が変わらないという状況はあり得るのでしょうか。
服部氏:
シスコはかなりそういう感じになってきてます。昔はアドオンでライセンスを購入する必要がありましたが、現在ではIPv4と同じ機能がIPv6でも同じフィーチャーセットに入るという風に変わりました。
高木氏:
A10ネットワークスは、3年前から標準機能です。みなさんよろしくお願いいたします。
一同:
(笑)
宍倉氏:
でもそれは企業努力的な部分で同じ値段にしているということですよね。実際にはカスタマーサポートなどにIPv6が加わることでコストはかかってくるわけです。
服部氏:
ネットワーク健全化という視点では、すぐにでもIPv6になったほうが良い?
宍倉氏:
コストをどこが負担するかという問題ですが、結局は全部がIPv6に移行するほうが、一箇所が企業努力せずに済んで良いと思いませんか?
田中氏:
それがあれば、ISPでもIPv6オンリーなら保守費は安い=ユーザに対してもIPv6オンリーでどうですか、という推進力が出てくるわけです。
関谷氏:
なるほど。
佐藤氏:
逆に「うちのルータはIPv6しか通さないんですけど」という話になったとき、回りは大丈夫ですかね?
一同:
(大爆笑)
宍倉氏:
実際問題、アメリカではIPv6に対応すると言っていますが、移行しきれてないですね。ニワトリと卵だと思うんですが、安くなれば移行するのか、皆が移行すれば安くなるのか、ですね。
関谷氏:
その辺をみんな真剣に模索しだしているのは事実なんですよ。
奥澤氏:
プロトコルスタックとしてIPv6があって、IPv4だけ無くなりますというのはあり得ないと思います。ネットワークの環境としてIPv4はずっと続くけれども内部・外部のリソース配分をどうするかが課題になってくるでしょう。
高木氏:
20年後に新装置を作るときに、IPv4がいらないということになればわざわざ実装しないですよね。
服部氏:
フルスクラッチで作るならそうですが、ネットワーク機器ベンダーは過去の遺産を引き続けるので機能として実装はされるでしょう。
宍倉氏:
ステークホルダそれぞれの意見があるということですね。では、アプリケーションはどうなっていくのでしょうか。
田中氏:
IPv6だけ、IPv4だけ、という風になるんじゃないでしょうか。「2012年に新しい世界がはじまる」というのはIPv6なんですよ。アメリカなどは、IPv6の世界の中でちゃんとやれれば過去のものとしてIPv4を捨てられる。日本人の捨てられない意識とは違うんですね。
栗山氏:
金額ベースで言っても、両方メンテナンスし続けるのは現実的ではないですね。
田中氏:
IPv6だけならIPv6しかやりたくないですね。両方やる場合はどちらに優先順位を付ける?という話になるので、最終的に片方にしかメリットが無いと思います。たとえば今回のコントリビュータの皆さんはもうIPv6 Readyと自信を持って言えるのか、それともいつになれば対応できると明言できるのでしょうか。
関谷氏:
ユースケースとしてある大学の例を言いますと、バックボーンはフルデュアルスタックでIPv6対応しています。エンタープライズ、例えばメールサーバやWebサーバは現状では非対応です。全学のメールサーバをIPv6に対応するのは勇気がいる判断ですし、一方で外部からのアクセスも確保する必要があって難しい部分です。またデータセンタやサーバ、大学ですとストレージですが、特にストレージ製品はIPv6対応していないものもあります。
宍倉氏:
必要か、という話もありますよね。
関谷氏:
大学の場合だと、学生用の共通端末をディスクレスでブートするケースがあって、ストレージがIPv6非対応だと端末もIPv6化できません。ソフトウェアプラットフォーム、大学にとっては学内のソフトウェアについては一部IPv6対応という感じですね。IPアドレスのアクセスログ部分は多分壊れます。現時点でSQLサーバにはIPv4の分のテーブルしか用意していないはずです。後はセキュリティ製品が一部足りていないので完全なIPv6対応はできませんね。
服部氏:
監視のソフトウェアとかは、対応されてきているのですかね。
関谷氏:
ある大学で使っているものは対応していないです。
川名氏:
あるISPで使っているのは一部対応していましたね。
服部氏:
それは自作で?
川名氏:
いや、企業の製品もありますし、自作でやっている部分もあるようですね。

関谷氏:
最終的に自作が必要な部分も出てくるので、IPv4とIPv6が同じ管理形態にできないケースがある。ここが同じでないと移行できないので、足りない部分と言えそうですね。
宍倉氏:
デュアルスタックで動くことを前提にしているケースってありますよね。たとえばSNMPはIPv4でしかとれないとか。
関谷氏:
syslogはIPv4だけですが、それはまだ許せるほうですね。
田中氏:
実際に「IPv6だけでできますか」と聞くと、そういった部分で「できない」になりそうですね。IPv6でsyslogが出せないという話になりますから。
服部氏:
現状でノード、ネットワークも全部デュアルスタックであって、IPv6だけでサービスをすることが考えられていません。一方で本当にすべてのことをIPv6化する必要があるのかという問題もあると思います。デュアルスタックであれば、syslogはIPv6の情報も取ってくるけれどIPv4でデータを上げてくればいいわけです。今の段階でピュアにIPv6オンリーのネットワークで、IPv4でできることすべてが可能というのをゴールにするのは違うと思います。
宍倉氏:
結局、何に向けてなにが足りないか、という話です。今完全IPv6ピュアに行くには何が足りないか、という話もあれば、これから1~2年に向けてなにが足りないかという話もある。これまで話をしたことの多くは後者ですよね。
服部氏:
そうです。ISPでは20年でも早いんじゃないか、というくらいにデュアルスタックを維持していくつもりなわけです。そのような状況の中でベンダーに対して「ピュアのIPv6で全部できてください」といわれても、それを開発してもコスト回収は現段階ではできないでしょう。そうなるとベンダーとしては難しい判断になりますね。そういう意味で、一番最初にIPv6ピュアになるのはどこですかね。
田中氏:
弊社ではいろんな業務用のハンディターミナルをやっているのですが、携帯電話にくらべても資源が厳しいんです。数が少ないなかでコストも厳しいので、デュアルスタックを実装する意義が少ないです。最低限のレベルでも、セットアップするときにIPv6とIPv4のどちらのスタックを使うか切り替える形になります。つまり端末はIPv4だけどサーバはIPv6とか.その逆とかの状況が発生すると保守やデバッグがとんでもないことになるわけです。
宍倉氏:
端末とか、端末用ソフトはv6だけとかに行きやすいのでしょうか。その上でバックボーンは両方サポートすればいい。
服部氏:
ネットワークはIPv6だけにして提供するところが少ないんですよ。
田中氏:
だからIPv6サポートだけでコストが安い、という提供の仕方をしてくれると話が合うんですよ。
宍倉氏:
つまりランニングコストがIPv4とIPv6で同時にかつ倍かかるという点をどうしていくか、というのが真髄ですね。
服部氏:
一方で最近センサーはIPv6が盛り上がってますよね。センサーノードは基本的にはIPv6スタックオンリーですよね。
関谷氏:
昔から言われている様に、従来のネットワークに囚われない部分がIPv6を推進していく気がしますね。完全にIPv6をターゲットに割り切って、未来のネットワークを構築していくという観点です。
武末氏:
弊社LEDの照明は10kとかのARMを使っているんですけれど、デュアルスタックになっています。消費電力のチェックや調光のオンオフをする際に、サーバを企業内に置くかデータセンタのクラウドに置くかをユーザが選べるようにしています。
関谷氏:
人間が使う所以外で、機器を制御するスタックとしてIPv6を使いたいという要望はあると思います。ビル管理の自動制御のような機械が使うネットワークはIPv6で、という可能性はあるでしょう。
武末氏:
プロトタイプを開発している段階なので、10本20本の制御ならどちらでもあまり変わらないと思いますね。
関谷氏:
でも10個20個の機器の制御には、IPアドレスが同じ数だけ必要になるでしょう? しかもそれを外部からやろうと思ったら、グローバルアドレスがないとダメですよね。それをIPv4でやろうと思った場合、20個のグローバルをもらうのはもう大変じゃないですか。
宍倉氏:
例えば会社を引越しした場合、IPv4が配られなくなったら、キャリアからIPアドレスを取得する際に「IPv4だと1個のグローバルが10万~100万します。でもIPv6だと月々1000円で大丈夫ですよ」という話になれば、情報システム部としても経営的な立場からしても「IPv4やめよう」という話になると思います。
関谷氏:
3年後のネットワークを見据えたときに、足りない技術としていくつかの課題が浮かび上がったと思います。セキュリティや監視系は必要でしょう。特にコンシューマが利用するようになればこれまで以上に「必要」だという声が上がってくると思います。それとともに近未来のネットワークとして、機器系のネットワークの存在も無視できないですね。今後3年くらいのネットワークを予想するにあたって、このInterop、ShowNetの場からどのようなメッセージを打ち出すことができるでしょうか。これからのネットワークは変わりますか、変わりませんか。変わっていたらなにが変わってるんでしょうか。
高木氏:
すぐにでもIPv6のみで欲しくなる時期がくるんじゃないかな、と思います。エンタープライズ系はある意味でクローズな世界なので「その中ではIPv4で運用できますよ」といっても周りがIPv6に移行すればせざるを得なくなる。そのころになれば業務用アプリケーションも移行がはじまって全体でIPv6の花咲く頃になると思います。
田中氏:
データセンタのサーバがIPv4を割り振れなくなったり、プロバイダなどが持っているアドレスプールが尽きる可能性が見えた辺りでなんらかの動きは必ず出てくると思います。ただ「IPv4アドレスの取り引きをする」という泥臭い話も出てきそうですね。
岩本氏:
多分共存が続くと思います。デュアルスタックで動かすユーザは増えているでしょうし、いずれにせよサーバやクライアントPCの耐用年数が過ぎてIPv6対応にしていこうという流れはあると思います。しかしそれがいつIPv4を止めるかという話とはまた別だと思うんですよね。
関谷氏:
後始末について言う人はだれもいない。
岩本氏:
そういう意味ではもうそろそろShowNetでIPv4を止めるのをいつにするかを決めたらいいのではないですか?
宍倉氏:
いいですね。
関谷氏:
Countdown to IPv4 Closing.
奥ノ坊氏:
IPv6へのカウントダウンじゃなくて、IPv4終焉へのカウントダウンですか。すごいメッセージですね。
関谷氏:
まずは、今年からくじ引きして当たった人にはIPv6しか提供しないというのはどうでしょう。
一同:
(笑)
奥澤氏:
「当たったら」というのがすごいですね。今後はIPv6じゃないとハズレなんですかね(笑)
関谷氏:
3年後に予想する世界というのは、もっと混沌としたネットワークなんでしょうか。Welcome to Chaos。その混沌からは抜け出したいですよね。
一同:
3年後に予想する世界というのは、もっと混沌としたネットワークなんでしょうか。Welcome to Chaos。その混沌からは抜け出したいですよね。
関谷:
ありがとうございました。

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