2007の模様
Interop Tokyo 2007展示会オープン「まさにThe Internet」が眼の前に
6月13日、打って変った晴天の中でInterop Tokyo 2007の展示会場がオープンした。平日にも関わらず多くの来場者が詰めかけ、各ショーケースや出展社のデモンストレーションに聞き入る姿がみられた。Daily Report初日は、この熱気あふれる展示会場の、開会式から基調講演、新設されたエンタープライズソリューションShowCase、そして今年の基幹ネットワークShowNetの全貌に迫る。
恒例の開会式で展示会スタート!
Interop Tokyo 2007展示会の、最初の大きなイベントとなったのがNOCブース前で行われた開会式だ。Interop Tokyo 2007実行委員長の高橋 徹氏が本年のテーマを語り、「Interopで展示している様々な技術やソリューション、事例を基に、ビジネスの現場での導入を期待する」と挨拶を行った。またプログラム委員会議長の江崎 浩氏は、昨年と比べてビジネスマンが多く来場しているとの感想を述べ、Interopで取り上げたネットワーク技術が一層のビジネス展開を果たすことへの期待を語った。最後にテープカットが行われて、いよいよInterop Tokyo 2007の展示会がオープンした。
本年度のInteropとその参加者への期待を語るInterop Tokyo 2007実行委員長 高橋 徹氏
テープカットに続いて会場がオープンした。
基調講演レポート1「IP Network 新時代」
Interop最初の基調講演を飾ったのは、慶應義塾大学 デジタルメディアコンテンツ統合研究機構 教授 古川 享氏だ。Interopの参加者にとっては元マイクロソフトの古川氏といったほうがなじみ深いかもしれない。このイベント全体初の基調講演としてInteropだけでなくIMCにも関連した内容のスピーチとなった。
広いテーマで現在のInternetの在り方について語る古川 享氏
まず古川氏は「音楽制作の現場ではすでにフルデジタル化が当たり前となっている。録音機器から演奏楽器、アンプ、プレイヤーに至るまでデジタル機器を使っている。驚くべきことにこれらの機器はそのほとんどがLinuxで動いている。つまり今の音楽制作では音源のデジタル化のみならずデータの共用化も進んでおり、入力→編集→出力およびその過程の伝送に至るまですべてがデジタル化されている。現時点ではすべてIP化しているわけではないが、IP化によって制作作業の効率化が図れるのは確実で、伝送帯域の向上等で、今後はその方向に進む可能性は十分に考えられる」と、現状について語った。
放送についてもデジタル化による恩恵は数多くあるとし、映画「男たちの大和」を例に「フルデジタル化した撮影データを編集局に送信、そのまま編集作業にかかることができる。さらに編集機材を編集局と現場とで共通化しているので、現場で監督が粗編集した素材をそのまま編集局側で完成させることもできる。デジタル化による作業や素材の共通化によって、ワークフローが変化した好例だろう。また現在のテレビ放映では(本回線ではないが)NHKの地方局との映像素材のやり取りのバックアップとして、IPネットワークでのデータ送受信を行っている」と語った。
現在、デジタル化された放送素材が、放送する側からどのようにとらえられているかについては「とある放送事故の際にバックアップ回線からの映像を配信したところ、2コマ程度のコマ落ちが生じたが、NHK側からの苦情はなかった。気がつかなかったのか許容してくれたのか」と、許容できる品質に達していることを実例を基にアピールした。
また六本木ヒルズでのIPTVを取り上げ「六本木ヒルズでは、300台以上のモニタに対してIPTVによる映像配信を実現しているのだが、惜しむらくはこの設備がビル内に限定されているという点だ。いくらすごい技術でも、柔軟性のとぼしい状態では広範な普及は望むことができない。それは日本の法整備の側にも問題はある。アメリカでは電話事業者のVerison社が、TVのポータルサービスを開始している。このような自由度の高さを、日本でもぜひ検討してほしい」と述べ、今後の課題について言及した。
基調講演レポートその2「世界初、標準テレビでインターネット~DTVが新しいメディアを創出する~」
続いての基調講演は、テレビポータルサービス株式会社 代表取締役副社長 久松 龍一郎氏によって行われた。そのタイトルにもある「標準テレビでインターネット」を実現するのが、同社が提供するサービス「アクトビラ(akTVila)」だ。
アクトビラサービスについて講演するテレビポータルサービス株式会社 代表取締役副社長 久松 龍一郎氏
このアクトビラは「簡単操作」「オープンな技術仕様」「安心安全」「プラットフォーム」という4つの特徴を持つ。「簡単操作」にする理由として、TVはあくまで家電製品であり、子供から大人・老人にいたるまですべての年齢に対応する必要性をあげる。そのため、基本的な操作はすべてTVのリモコンから行えるようになっている。「安心安全」も同様に、誰にでも使えるようにするために、年齢制限を伴う有害なコンテンツや悪質なハッカーからの攻撃を防ぐことが必要となったとのことだ。
また「オープンな技術仕様」にした理由として、現在のTV端末に対してWebブラウズおよびネットワーク機能を付加するだけという簡単な仕様変更だけで対処できるという点があげられる。また動画圧縮形式にはMPEG2およびH.264形式を採用している。この2つはすでにデジタルTVで採用されている方式なので、TV側にパーツを追加することもなく、現在のデジタルTVでそのまま再生できるという。また基本的なデータのやりとりはHTTPによって行われる。これもまた既存のWebブラウザで対応できるという利点がある。
4番目の「プラットフォーム」とは、基本的なベースを整えることだ。例をあげると、携帯電話のブラウザは各社用に別途作成する必要があり、手間も数倍となっている。しかしプラットフォームさえ決めておけば、「アクトビラ用」のページを1枚作るだけですべての「アクトビラ」TVに対応できる。また基本的なフォームを作っておき、要素をTV端末側の情報によって差し替えることも可能だ。デジタルTVのチューナー部には基本情報として所在地の郵便番号を登録する必要があるが、この情報を利用することで1枚のページソースから所在地の天気予報や交通情報を扱うようにすることもできるとのことだ。
アクトビラは、現在は静止画とテキストのみでの提供となっているが、ユーザーからの要望でもっとも多いのが、動画サービスだという。これについては、今年の秋からストリーミングVODサービスが開始され、さらに08年には動画データのダウンロードサービスも開始予定とのことだ。
アクトビラの動画サービスの特徴としては、対応デジタルTVさえあればSTBなどの追加機器を導入することなくイーサケーブル1本だけですぐに楽しめる点があげられる。ただでさえDVDプレイヤーやHDDレコーダー、ケーブルテレビチューナーなどで煩雑になっているTV周りをすっきり収めることもメリットだろう。新たな標準プラットフォームとして期待させられる講演となった。
エンタープライズソリューションShowCase「なんちゃって内部統制にならないために」
昨年までのInteropでは、ShowNetの中で取り上げられていた、エンタープライズ向けの「認証」や「統合ログ管理」「セキュリティ」「ネットワークアクセス管理」などのテーマが、今年は時代の流れを受けて専門性を高めた「エンタープライズソリューションShowCase」として再構成された。
昨今、企業システムを語るうえで欠かせないキーワードとなっている「内部統制」や「日本版SOX法」。しかし実際に運用が迫った現在に至っても、未だ導入・運用に向けた詳細なガイドラインはなく、各社が手探りで現状把握に努めている段階といえるだろう。その中で、一部の要件だけに目を向けた「なんちゃって内部統制」ともいえる、十分ではない導入が行われているという。そこで、エンタープライズソリューションShowCaseでは、数あるネットワーク関連ソリューションをあつかってきたInteropだからこそ紹介できる、今できること、そして実行する必要があることを取り上げている。
一連の流れの中で、重要な4つのポイントについてテスト環境を使いながら解説するエンタープライズソリューションショーケース
内部統制に必要な知識、技術、また内部統制の必要性といった知識が得られるセミナーが開催されている
エンタープライズソリューションShowCaseでは、認証→統合ログ管理→ネットワークアクセスコントロール(NAC)→仮想化、という一連の流れで重要なポイントを解説している。これまでにもそれぞれの項目は、各ビジネスの現場で重要視されているのだが、お互いが連携しあってこそ、真の内部統制は実現できるという。
たとえば正しく認証が行われていない状況では、イベントやアクセスに対するログもそれが正規のものか不正なものかを記録することはできない。さらにファイルなどへのアクセスに対しても、そのユーザに許可するべきかどうかは判断できないこととなる。この一連の流れを、実際の統合管理の基に展示している。今すぐに、何からはじめるべきなのか。その答えを知りたいという方は、ぜひ足を運んでほしい。
Web2.0パビリオン&CGM&サーチマーケティングクラスルーム
Web2.0を提唱したティム・オライリーが語ったWeb2.0の特長としていくつか要素がある。個人利用者の立場から見ると、情報を一方的に受けるのではなく情報の双方向性を高める(例としてはBlogやWikiなど)ことが大きなポイントとなる。またコンテンツ提供者の立場で見れば、Webサイト自体の操作性を高めるためのインターフェイスやデザインの向上などが重要な要素としてあげられるだろう。しかしその実体はいまだ漠としてつかみどころのない状態。そんな状態だからか、今回のWeb2.0パビリオンは各社それぞれの解釈に従っての独特な展示となっている。
情報の双方向性を利用してグループ間の情報共有をやりやすくするために、BlogやWikiを応用した社内グループウェアを提供するメーカー、また自由なWebサイトデザインを実現するための新たな言語環境を提唱するメーカーなど、実に各社各様の解釈を展開していた。さらに一歩推し進め、他のHPから引用してきた情報を取りまとめることを可能にする言語も見られた。これを企業に応用し、支店ごとにアップしている情報を本社側が取りまとめるためのツールにしたという例もある。今までは支店から送られた情報を本社側で取りまとめるという方法を取っていたが、この方法では本社側の取りまとめの手間と、支店からデータが送られる際のタイムラグというロスが生じる。新たな方式を取ることで、これらのロスを減らすことができたという。
Web2.0に関する各社なりの展示を繰り広げる「Web2.0パビリオン」。注目のキーワードだけに足を止める来場者は多い
講座形式をとっている、CGM&サーチマーケティングクラスルーム。今すぐにWeb2.0的な情報をビジネスに役立てようとする、鋭いまなざしの来場者が目に付く。
Web2.0パビリオンが一般的なユーザやユーザ企業に対するソリューションを提示しているとすれば、CGM&サーチマーケティングクラスルームは、Web2.0的技術をいかにビジネスに役立てるかを追及した「勉強」ができる場所だ。このタイトルが表すように、CGM(Consumer Generated Media)と、それをいかに検索し、マーケティングに役立てるかについての講義が行われている。
やはりWeb2.0というものは、まだまだ実体を確定できるほど固まったものではないようだ。しかし逆に、Web2.0はまだまだ解釈の余地があるとも言える。上手に利用することで、先の例のように実際のコスト減につながるなど、ビジネスに活用していくことは可能なのだ。開会式の高橋氏の挨拶ではないが、これらの事例を参考にして独自のビジネスモデルを構築することが今後重要となっていくだろう。
ShowNetを体験しようパート1ウォーキングツアー
Interop恒例のウォーキングツアーは、本来表には出ない裏方であるネットワーク構築現場を垣間見ることができる人気のイベントだ。まず最初に「ブリーフィング」として、今回のネットワーク構築において利用した技術の解説が行われた。Interopのミッションの1つに、最新技術を大規模にテストする「実験の場」であることがあげられる。普段は各社・各研究所ごとに個別に行っていた接続実験を、大々的に相互接続する貴重な場でもある。今回は特に、今後1、2年の間に投入されるであろう最新技術をふんだんに使って、現在発覚しているネットワーク上の課題に対する「ひとつの答え」を提示しているということだ。
恒例となっているShowNetウォーキングツアー。
単なる展示会にとどまらないInterop Tokyo 2007の本当のテーマと本当の姿が見られる貴重なイベントだ。
現在はADSLやFTTHの普及によって、一般の顧客にもすぐ手が届くところにまでブロードバンドが到達している。となると次の段階としてはやはりさらなる高速化が求められることになる。しかしここまで高速化が進むと、ただ単に回線を高速化しただけではダメで、さらに一歩進めて「安定性」を確保するのが重要となる。
今回のShowNetではこの安定性を確保するために、さまざまな箇所で転送速度の監視・検証を行っている。例えばバックボーンの中にサブ回線を予備用として確保することで、事故が生じた際にも適宜カバーできる体制を随時整えている。またメンテナンス体制も、現場に赴くことなくリモートで状況を復旧できるように「リモート制御用サーバ」を単独で立て、さらにはメンテナンス専用回線をメイン・サブ回線とは別に設けるという万全の体制を整えていた。「障害は起きないものとする」ではなく、「障害は起きるもの、だからこそすぐに復旧できる体制を整えておく」ということが重要だということと、いつ起きるのか分からない障害に対して常に備えておくことこそが真のプロフェッショナルだということを、見せ付けられた気がした。